アグロフォレストリー

トメアスのアグロフォレストリー

ブラジルのトメアスは、カカオ豆のアグロフォレストリーでは有名なところです。そしてまた、トメアスのアグロフォレストリーは日本人移民が始めたということから、日本にも関わりがあるところなのです。

 

明治製菓がカカオ豆を仕入れているトメアス総合農業共同組合(CAMTA)は、トメアスにいた日本人移民が設立しました。

 

日本人移民がトメアスに入ったのは1929年で、入植したばかりの時は、過酷な労働・厳しい環境に生活苦・また風土病に苦しめられました。しかし、ここで転機が訪れます。

 

1933年にシンガポールからコショウの苗が入ってきました。このコショウがトメアスに富をもたらし、それ故に「黒いダイヤ」と呼ばれていました。

 

コショウによって繁栄がもたらされましたが、1960年頃にフザリウム菌によって根腐病が流行ってしまい、コショウは続々と枯れてしまいました。

 

その結果、生産量が激減してしまったため、CAMTA(トメアス総合農業共同協会)は、病気のさらなる被害と市場価格の変動を避けるために、コショウの代替としてカカオ豆を提案しました。

 

カカオ豆は日陰を好む作物で、40%の光があれば栽培できるといわれています。他の多くの樹木があっても育つことから、彼らは先住民の方法を真似て、コショウとともにカカオを植え始めたのです。

 

それからコツコツと育て始めた彼らに再び転機が訪れます。1975年にカカオの価格が高騰し、トメアスのカカオ豆も注目されるようになったのです。

 

これを機に、CAMTAはコショウを主にし、カカオ豆の他にもアブラヤシやゴム、パッションフルーツの栽培を始め、トメアスの畑・樹木・果樹からと多くの作物が採れるようになりました。

 

今では他にもアセロラやココナッツ、アサイーなどもつくられています。

 

このように様々な作物を育てることで、樹木を伐採して畑をつくる必要なく、同じ状態で長期的に作物を得られるようになり、収益も安定していったのです。

 

トメアスのアグロフォレストリーは、コショウの激減がなければ、生まれなかった方法なのです。

トメアスのアグロフォレストリーの特徴

トメアスのアグロフォレストリーは、コショウの生産が激減するという打撃を受けなければ、確立されませんでした。

 

カカオ豆を得たことで、畑に樹木を植えるという混植を始め、そしてまたそれを継続的な方法として定着させたのです。

 

初めて混植を農業のシステムとして取り入れたのは、日本人移民の故・坂口氏という人物で、彼はアマゾンの先住民が様々な作物を混植して、飢えとは無関係な生活を目にしたことが決定打だったようです。

 

そこから、日陰でも育つカカオ豆を新たな作物をして採用したのでした。

 

トメアスのアグロフォレストリーの特徴は、下記のようなものが挙げられます。

  • 作物は換金できるもの。
  • 作物が作り出す環境の推移によって他の種類へと変わる遷移型なので、作物は1年目からの収穫が可能。
  • 複数の作物を平行して育てることにより、商業的に自立できる。
  • 農薬と肥料が最小限ですむ栽培が可能。

 

従来の農法は、作物を新たに作る度に森林を切り開いて農地・牧場に変えていくものでした。それに対しアグロフォレストリーは、様々な種類の作物をいっしょに育てるという方法なので、森林をつくる感覚でつくっていきます。

 

そして、最後には森を完成させるように育てていくため、環境と共存しながら持続できる農法なのです。
アグロフフォレストリーによるメリットは、経済的に安定し持続的発展につながること・不法伐採を含めた森林伐採から守れる・生物多様性の維持と回復・地球温暖化で問題の温室効果ガスの固定、というものが挙げられます。

 

トメアスのアグロフォレストリーは畑の環境や収穫時期、収益のタイミングなどで育てる作物の選定をし、さまざまな組み合わせで成り立っています。

 

コショウなどは短期的な収入源として、果樹などは木が育ちきった後は生産量が落ちますが「木材」としての価値が出るようになるまで育てられ、先々の収入につなげられたりします。

 

経済的にも安定し、育てたすべてのものが有効活用できるように無駄のない農法なのです。

トメアスと日本企業

トメアスのアグロフォレストリーは、カカオ豆で一躍世界的に有名になりました。しかし、トメアスではコショウが病疫によって激減した時の二の舞にならないように、他の作物も育て、経済的に困難にならないよう、リスクヘッジをしています。

 

それが、短期的な収入源と長期的な収入源との二つに分けて、作物を何種類も同時に育てることで経済的困難を未然に防いでいます。

 

カカオ豆は、実がなるまでに約3年かかるため、その間は早く成長するバナナやコショウで収入を得ます。
カカオ豆=長期的(先々の)な収入源、バナナ・コショウ=短期的な収入源なのです。この短期的な収入源にあたる作物を原料にして、ビジネスを展開している日本企業もあります。

 

株式会社フルッタフルッタは、トメアスからバナナやアサイーなどのアマゾンフルーツで、ジュースやピューレ、ダイエット食品などを展開しています。

 

また同社は、東京・大手町にジュースバーをかまえ、ここでもアマゾンフルーツの新鮮なジュースを消費者に届けています。

 

同社社長の長澤氏は、トメアスのアグロフォレストリーの畑に行った時、「今まではビジネスが森林を破壊していく姿を見たことがあるがビジネスの力で蘇らせることもできるんだ」と感銘を受け、また同時に、「自分たちが売ることで森林を蘇らせることが達成感になるのだ」と話しています。

 

アグロフォレストリーに感銘を受けた長澤氏は、トメアスの輸出を増やせばアグロフォレストリーの拡大につながると考え、CAMTAと代理店契約を結び、アマゾンフルーツのジュースを日本で発信しているのです。

 

アグロフォレストリーを理解し、感銘を受けたことによって新しい企業が協力体制で新しくビジネスを展開するなど、アグロフォレストリーの認知度と普及は確実に前進しているのです。