ブラジルのプランテーション農法事例
アグロフォレストリーは、熱帯地域を中心として普及が押し進められていますが、今までのプランテーション農法で世界経済につながっていたこともまた事実です。
ブラジルは、植民地時代の初期から経済の中核として農業が盛んでした。ブラジルの農業はプランテーション農法で、単一作物を収入源とし、広大な土地と多くの労働力で支えられてきました。
16世紀から始まったサトウキビ栽培にはじまり、綿花やココア・天然ゴム・コーヒーなど、プランテーション農法の代表的な作物を大量に生産してきたのです。
ブラジルは多様な気候帯により、それを活かして多くの作物を作れることが強みであり、1990年代に入ってもコーヒーやサトウキビから精製された砂糖の生産国として地位を確固たるものにしていました。
しかし、コーヒーを戦力としていたブラジルは、プランテーション農法が確立し、それによって収入を得ていたために、大量の農薬と化学肥料を使い、多くの森林も伐採してきました。
この結果、ブラジルには、世界にある熱帯雨林の約30%を占めるアマゾンがありますが、1960年以降、森林減少が急速にすすんでいるのです。
そのスピードは異常なもので、1979年から1990年までの間に、ブラジルを中心にアマゾン流域の森林は約12%なくなってしまいました。
これらのすべてがプランテーション農法が引き起こしたものではありませんが、これほどまでに急速な森林減少の一因に、プランテーション農法も含まれているのは間違いないでしょう。
森林保護のアグロフォレストリーとは正反対のプランテーション農法ですが、プランテーション農法により経済が発展してきたということも間違いない事実なのです。
アグロフォレストリーとプランテーション農法
プランテーション農法による一番の被害は、やはり森林破壊です。
森林破壊による様々な問題が出ていることは明らかな事実でありながらも、すぐにアグロフォレストリーに移行できないのは、その国の経済の中核となる作物をプランテーション農法で栽培しているからです。
プランテーション農法によって輸出国としての地を確立した国々が、安定した成果がでるまでに時間がかかるアグロフォレストリーを取り入れると、直近の収益に影響が出てしまいます。
国の経済問題が、プランテーション農法をすぐに変えられない一番の理由でしょう。
大量に使用される農薬も、忘れてはいけない問題です。自然災害が起こった時に農薬が流れ出てしまうと、環境汚染と同時に、最終的に食料や水を通して人々の口に入ってしまうからです。
アグロフォレストリーでは、農薬や化学肥料に頼らないで自然が持つ本来の生態系の状態で作物を栽培するので、農薬の被害を心配する必要はありません。
そして、大量な労働力が必要なプランテーション農法は、もし今働いている労働者の大半が外国労働者であった場合に、彼らがずっとその地で農業をするとは限りません。
そのため、持続して同じ労働力で栽培を続けるかどうかは保証できません。アグロフォレストリーは、過大な労働力に頼らずに、次世代にも続く農法として栽培環境づくりに力をいれています。
そのため、労働力が一気になくなったとしても、打撃を受けるというリスクは少ないのです。
効率よく、すぐに収入を得ることができるものの、環境破壊に大きな影響を与えているプランテーション農法と、環境には優しく、次世代にも確実につなげることができるアグロフォレストリー。
アグロフォレストリーが今のプランテーション農法のようになるには、まだまだ時間がかかるでしょう。