マレーシアのプランテーション農法事例
プランテーション農法による事例を引き続き見てみましょう。マレーシアのサバ州では、アブラヤシの栽培が有名で、こちらもプランテーション農法によって行なわれています。
2005年1月にマレーシアの首都・クアラルンプールで開催された「持続可能なアブラヤシ」という公開フォーラムでは、主に今後もいかにアブラヤシ産業を持続できるか?ということがメインテーマであり、環境に関して改善を考えることは少なかったようです。
サバ州で行なわれているアブラヤシのプランテーション農法によって生まれた問題を無視することはできません。
マレーシアは、イギリス占領時代からゴムの栽培が盛んで、カカオも一時期広がりましたが、現在ではアブラヤシのプランテーションがサバ州全土の約20%を占めているといわれています。
プランテーション農法では、森林伐採された後の丸裸な土地に、単一作物が延々と植えられます。アブラヤシ・プランテーションを行なう地方を車で走ると、見渡す限りアブラヤシしか見えません。
プランターが日本の市町村と同じくらいの面積を所有しているためです。広大なプランテーション農地には、現地人以外にも、外国人労働者が投入されています。
そのため、今後も現状と同じように持続して栽培できるかどうかは不明瞭なのです。
しかし、現状ではアブラヤシの油、パーム・オイルは安価であり大量供給が可能であることから、世界からの需要が伸びています。
マレーシアは、世界でも有数なパーム・オイル輸出国として世界に貢献しています。日本も、マレーシアからパーム・オイルを輸入しています。
その量は、マレーシアのパーム・オイルの約40%といわれており、パーム・オイルを使った石けんの粉などの加工品を含めると、その数は世界的にも物凄い量になるといわれています。
つまり、プランテーション農法による作物の輸入に依存している国があると、途端にプランテーション農法がなくなってしまった時に、経済的打撃を受けることは眼に見えているということです。
アグロフォレストリーは、まるで正義のように語られている部分もありますが、プランテーション農法で安定した経済状況を保っている国は実に多いのです。
プランテーション農法の普及範囲にアグロフォレストリーが追いつくのは、まだまだ難しいといえます。
マレーシアのプランテーション農法の問題点
サバ州のアブラヤシが並ぶプランテーション農場を見てみると、一見森林のように見えます。しかし、実際は森林の機能としては何も果たすことができていません。
熱帯地域の森林の大きな役割には、熱帯モンスーンによる激しい雨を受け止めて保水してくれるというものがあります。
この保水が、人々の飲料水や工業用水になり、提供されてきました。しかし、開発によって森林が減少してしまったことで、モンスーン気候で長い雨期がきてしまうと洪水が起きてしまい、周辺にある村々で被害がでてしまうのです。
洪水によって土砂が削られ、それが河川に流れると河川は汚れ、河川に生きる魚や川エビの産卵場所がなくなってしまいます。
また、川の流れが変わり、海に出ると珊瑚礁を傷つけてしまいます。プランテーション農法で大量に使われる農薬やアブラヤシの搾りカスも流れ出てしまい、川や海を汚染してしまいます。
水の保水場所がプランテーション農園によってなくなってしまうと、人口増加が続いているため、水不足の問題が生まれてしまったのです。
このような数多くの問題がプランテーション農法によって生まれています。
しかし、サバ州では、森林を農地にすることに規制をかけているものの、農業生産の多様化が市場経済のなかで行なわれていることで、プランテーションの拡大を押さえるのは非常に難しいのが実情です。
森林破壊による様々な問題が出ているため、アグロフォレストリーにしたいと思いながらも、急速な経済発展を第一優先にしてしまうと、アグロフォレストリーへの変換はすぐにはできない難しい状況ということです。